「国内では使われていない除草剤が輸入牧草を通じて国内の牛の体内に入り、その牛のふんや尿から作った堆肥(たいひ)を使ったトマトやキクが生育障害を起こしていたことを、畜産草地研究所などの研究グループが突き止めた。有機農法や資源利用型農業として利用促進されている堆肥で想定外の汚染が起こる可能性が示された。」

有機農法なのに、家畜の飼料に除草剤が用いられていたため、その糞にも除草剤が残り、結果、除草剤の影響が作物に出てしまったとのことだ。

これはどうしようもないなあ・・・・

有機農法は一般的に自然環境や生態系と調和した形で実践されることを目ざした農業の一形態で、消費者に安全・安心な農産物を提供することを目的としているが、実際はそれだけでなく1.土壌物理性の改善、2.土壌化学性の改善、3.土壌生物層の改善という3つの効果を持っている。化学肥料・除草剤・農薬に頼った近代農業だと、土壌生物が死滅することにより、土壌がカチカチとなり、肥料効率が低下し、病虫害が発生しやすくなることが経験的に知られている。

有機農業により有機物を土壌へ与えると、土がふわふわとなり農作業が容易になること、作物の育ち(根の張り)がよくなること、病虫害に強くなることなどが知られている。つまり、有機農法とは必ずしも安全・安心な食を消費者へ提供するだけでなく、生産者にとってもメリットがある農業だと考えられるのだ。もちろん、近代農法と比べれば手間がかかること、収量が落ちる場合があることなどマイナスの側面もあるが、そのマイナスを付加価値の増加が補えばシステムとして回る。

にもかかわらず、今回はその有機肥料を用いたことによって逆に作物の生育に被害が出てしまった。

「グループによると、長野県や愛知県などのトマトやミニトマト、キクの生産農家の一部で2005年ごろから、牛の堆肥を使うと葉がちぢれたり、実が細長くなったりする生育障害が起きることが問題になった。」

そもそも、有機肥料にしても「生育を良くするため」に使っているのだから、その肥料で生育障害が出れば元も子もない。

だからと言って、家畜の飼料生産の段階から完全に農薬・除草剤を除外することは非現実的だろう。もちろん、日本で使用が認められていない農薬・除草剤を用いた作物・飼料の輸入を一切認めないというようにできるだけ可能性を排除することは可能だとしても。

現実としての有機農業はコストや生産性、価格(付加価値)なども含めて総合的に評価してプラスの場合にのみ拡がっていくだろうから、今回のように有機肥料を用いたことが生育障害に結びつくようじゃあ、どの観点から見てもどうしようもない。


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