政府は2009年度2次補正予算案について、1次補正で凍結した2.7兆円を超える額を支出する考えを示した。しかし、そもそもが1次補正予算は昨年のリーマンショックに始まる世界同時不況への経済刺激策だったのだから、それをわざわざ凍結して、経済の底抜けを促したことは取り返しがつかない。そして、ここへ来て組まれる予算が、単に凍結分を新たに支出しますというんじゃ、意味がわからない。
2次補正2・7兆超、菅国家戦略相…円高株安対策
政府が検討している2009年度第2次補正予算案について、菅国家戦略相は30日午前、東京都内で記者団に「1次補正の中で凍結した範囲を超えて対応していこうという姿勢では(政府内で)一致している」と述べた。
麻生政権が作った1次補正予算の事業凍結で確保した2・7兆円の財源を上回る規模を容認する考えを示したものだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091130-00000569-yom-pol
凍結した分を支出するなら、最初から凍結しなければ良いだけ。支出が遅れた分、経済はダメージを受け、新たに支出したところでそれは回復しない。こういうことができるのは、政府支出の「額」が経済を下支えするというマクロ経済の大原則がわかっていないから、時間をかけてでも「内容」を変更して支出しようと考えているのだろう。これはミクロ思考の典型だ。
そして、ミクロ思考の現れたもう一つの典型的な事例がこれ
2次補正に円高対策=鳩山首相「市場を注視」
鳩山由紀夫首相は29日午後、首相公邸で菅直人副総理兼国家戦略担当相、藤井裕久財務相、平野博文官房長官、仙谷由人行政刷新担当相らと急速な円高・株安への対応を協議し、対策の検討を指示した。今週の市場の動きもにらみながら、内容の詰めを急ぎ、2009年度第2次補正予算案に盛り込む。
会談は、首相が緊急に招集し、早急な対応が必要との認識で一致。席上、首相は「あす(30日)以降の市場の動向をきっちり見ていく必要がある」と強調した。この後、都内で記者団に「(株安のきっかけとなった)ドバイでの信用不安を含め、経済対策をどう行うか話をした」と説明した。対策として、円高による輸出減で打撃を受ける企業への支援策などが検討されるものとみられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091129-00000050-jij-pol
円高対策として「円高による輸出減で打撃を受ける企業への支援策」を検討するらしい。
そもそも、これだけ円高が進んでいるのは、アメリカ、イギリス等の諸外国がリーマンショック以降どんどん貨幣を印刷し、市場へマネーを供給していること、それにより金利が下がり、日本と諸外国との金利差がなくなっていることが原因だ。つまり、諸外国がマネーサプライを100%-200%程度まさに倍増させる中、日本はマネーサプライを増やさないから、相対的に円の価値が他国通貨に比べて上昇しているということになる。
ならば、円高対策は円を刷ること以外にはありえない。
これは金融政策・マクロ政策であり、円を増刷した結果、円の価値は下がり、円安が進行し、デフレからインフレへと転換する。
デフレ不況から脱出するために、まず最初に必要なマクロ政策であって、ものすごく簡単な算数レベルの話だ。
なのに、日本は「貨幣需要がないから」という言い訳でマネーサプライを増やさず、諸外国との金利差もなくなっているから円高が進行している。
この部分を放っておいて「円高による打撃を受ける企業への支援策」というミクロ対策で乗り切ろうというのは、全く物事の順序が間違えている。まず、マクロ政策によって経済を安定させ、その上で、ミクロ政策を検討するべきなのだ。
常考